side : P


彼女は滅多に話さない
彼女は常に待ちはしない
彼女は決して追いはしない

いつも気付くとすぐ傍にいて
別れて初めて居たことに気付く。




彼女は滅多に話さない
僕も滅多に話さない
あいさつなんてしたことがない
天気の話もしたことがない



彼女は常に待ちはしない
僕が来るのを待ってはいない
それでも僕らはしばしば会って
同じ時間をただただ過ごす



彼女は決して追いはしない
去りゆく僕を追うことはない
僕を欲することもなければ
隣の僕を厭いもしない。




「ねぇ」


こうして日々は、ゆっくり過ぎる。


「踊りましょう」


ひたすらに。
























− kiss of death −
touching : 1 / 天籟音律

























彼女は踊る、連日連夜
彼女は眠る、昼夜を問わず
彼女は話す、ほんのたまさか

傍から見ればそれは気まぐれ
彼女の中には確固のパタン。






彼女は踊る、連日連夜
踊る彼女の姿は艶治。
彼女の耳には瞬く星も、
舞曲奏でるピアニシモ。



彼女は眠る、昼夜を問わず
警戒心を一糸纏わず。
気高い寝顔は時に遥遠、
漏れる吐息は甘く妖艶。



彼女は話す、ほんのたまさか
夢と紛うは声の甘さか。
紡ぐ言葉はまるで神韻、
いずこに在るか知れぬ真因。




「ねぇ」


こうして日々は静かに過ぎる。


「踊りましょう」


ただ、ひたすらに。

ゆっくりと。











side : P with V




「君と踊ると、いつも、不思議な感じがする」

「・・・どんな?」

「何て、言えば、良いんだろう」

「・・・」

「そう、音楽が無いのにあるみたいに、
 呼吸が分かる所とか、特に」




「あるわ」

「え」

「音楽」

「?」




「(プラトーの両目を手でそっと覆う)」

「・・・ヴィクトリア?」

「(囁く)口をきいては、だめ」

「・・・」




「分けてあげる」

「・・・・」

「私の、音楽」

「・・・・・」

「後は聞こえる筈」

「・・・・・・」

「貴方にも。」

























「ねぇ、」

「踊ろうか?」

「・・・えぇ。踊りましょう」








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