…* The Cause of Santa Claus 9 *…
ドアをそ―っとそ―っと開けて
暗い虚空をじっと見つめて
この部屋のどこかにいるはずの
スキンブルの気配を探る。
……いた。
二匹して、最大限の注意払って慎重に足音消して、
ゆっくりゆっくり近付いて、枕元にプレゼントを置く。
目が覚めたら真っ先に、視界いっぱいに入る位置を考えて。
…ふぅ。
まだ気を抜いちゃいけないと分かってる
けど、思わず細く吐息が漏れた。
今までに、こんなに緊張したことってあったかな?
いや、なかったと思う。
サンタクロースは毎回こんなに緊張してるのかな?
一息ついて、改めて見てみると
スキンブルの毛布がずり落ちかけている。
一瞬躊躇したけれど…こんなに寒いんだもの。
放っておいたら、風邪をひいてしまうかも。
だからバレないように、起こさないように。
細心の注意を払って、毛布を肩までかけてやる。
「なーなーマンカス」
「!!」
小さく小さく抑えられたタガーの声。
でも思わずびくっ、として
何事かと思い振り返る。
タガーは、傍らの机を指差していた。
指の差す先を見ると、机の上にはケーキが一切れ
それと、ブランデーが一杯。
「…?」
「あれってさ、おれたちにじゃねー?」
「まさか」
「でも、サンタへって書いてあるぜ?」
そっとにじり寄って見てみると、確かに。
"Dear Santa"と表書きされた、一通の手紙。
「なー?」
「…あぁ」
「じゃーもらってもいいよな♪」
「ちょっと待てって!」
「何だよ」
「ランパスがすぐ戻って来いって…」
「いーっていーって、そんなもん気にすんな」
「でも…」
「それに、折角用意されたもん、食べなきゃスキンブルにも悪いだろー」
正しいんだか正しくないんだか分からない理屈を並べて、
タガーはケーキにかぶりついた。
…まったく。
「ほら、マンカスも」
「…あ、あぁ」
…結局、おれも一口もらった。
甘いケーキの味が、冷えた身体を暖めてくれるくらい美味かった。
「おいしーな」
「うん」
おれたちが、すっかりケーキに気を取られていた
その時
「………んん…」
おれたちの動きが固まった。
スキンブルが寝返りを打った。
………。
……………。
………………。
どうやら、目が覚めては無いらしい。
再びすやすやと安らかな寝息を立てるスキンブル。
…心臓が、止まるかと思った。
「な、なぁ…」
「あぁ……そろそろ…」
入ったときと同じように、
そーっとそっと、神経をひげの先まで張り巡らせて
ゆっくりゆっくり、注意を爪先にまでゆき渡らせて
静かにドアを開け、静かにドアを閉め、
おれたちは部屋を後にした。
物陰で、胸を撫で下ろしていた兄貴猫の存在など知る由も無く。