…* The Cause of Santa Claus 2 *…
これは皆のリーダーたる彼が、まだとても幼かった頃の話。
昔から自由奔放だった彼の幼なじみもまた、とても幼かった頃の話。
いたずらばかりしていた少年たちの生み出した
数多くの武勇伝の中の、その一つ。
しんしんと、冷たく静かに雪の降る
冬めくある夜に始まるお話。
* * *
「なぁ、マンカス」
「…ん?」
「お前さー、サンタクロースって見たことあるか?」
暖かな毛布の中でうつらうつらしていたところを、
タガーのその一言で、桃源郷から引き戻された。
「何だよ、急に」
「なぁ」
「いや、無いよ」
「だよなー」
「それがどうかしたのか?」
「なぁ、いっぺん見てみたいと思わねー!?」
キラキラキラキラキラキラ…☆
………………。
…はぁ。
また、この瞳だ…。
溢れんばかりのパワーに輝く、この瞳。
タガーがこの瞳をしている時は大抵ロクなことを考えてない。
経験上、おれはそれをよく知っていた。
それも嫌、と言う程に。
だから。
「おやすみ、タガー」
「無視すんな、よっ!」
バサァッ
「わっ!…て、何すんだ!」
「なぁ、見てみよーぜ、サ・ン・タ♪」
「返せってば!」
毛布を求め伸ばす手を、闘牛をあしらうかのごとく、弄ぶ。
群舞の時の、気の抜けた動きはどこへやら、
こういう時だけ、動きが機敏なひねくれ子猫。
「見に行くってゆうまで返さねーもん」
「どーゆー理屈だ!ほら、返せってば」
「いいじゃん、ほら、やろーってば。なー?」
「お前一人でやればいいじゃないか」
「やーだー。マンカスと一緒じゃなきゃやーだー。」
「…お前なぁ」
「あんた達っ!」
驚いたおれたちは、思わずその身を竦めて縮こまる。
不意に響いた大音声、声の主はジェニエニドッツ。
ここ数日のあまりの寒さに耐えかねたおれたちは、
暖かなジェニエニの屋敷にお邪魔しているのだ。
「いつまで起きてるんだい、さっさと寝なさい!」
「……はーい。」
「……へーい。」
「もうすぐクリスマスなんだよ、良い子にしてないとダメじゃないか。
ほら、分かったらさっさと寝る。もう夜も遅いんだからね」
乱れたおれたちの毛布を直し、再び階下へと降りていく。
大きな背中が灯りに揺れて、屋敷の床が軽くしなった。
気まずい、沈黙。
「…お前のせいで怒られただろ。」
「先に言い出したのはお前じゃないか」
「お前が先に手を出したんだ!」
「それはお前が毛布を奪ったからだろう!」
「早く寝なさい!」
「「……。」」
屋敷の時計が十を打った。